詳細解説
1. トリガー可能な引き出し(2025年7月23日)
概要: Lidoの引き出しコントラクトを通じて、誰でもバリデーターの退出を開始できるようになり、中央集権的な管理者への依存をなくします。
このアップデートはEthereumのEIP-7002標準を実装し、ステーカーや第三者がバリデーターの退出をトリガーできる仕組みを提供します。これによりノードオペレーターの承認を必要とせず、Ethereumの信頼不要(trustless)という理念に沿ったものとなっています。SnapshotやAragonでの投票(7月21日〜28日)で承認されれば、正式に導入されます。
意味合い: これはLDOにとって好材料です。バリデーター管理の中央集権リスクが減るため、自己管理を重視するステーカーの参加が増える可能性があります。(出典)
2. 二重ガバナンスの開始(2025年7月1日)
概要: stETH保有者に対して、DAO提案に対する拒否権を動的なタイムロックで付与します。
stETH保有者は供給量の1%をロックすることでガバナンスの実行を5〜45日間遅延させることができ、10%をロックすると「レイジクイット(怒りの退出)」が発動し、反対派が退出するまで全提案が凍結されます。この仕組みはエージェントベースのシミュレーションや形式的検証を経て、カルテル化(特定グループによる支配)を防止しています。
意味合い: 短期的にはLDOにとって中立的です。ステーカーとLDO保有者の権力バランスを取る一方で、ガバナンスが複雑化します。長期的にはガバナンスの乗っ取りリスクを減らし、プロトコルの信頼性を高める効果があります。(出典)
3. セキュリティ監査(2025年6月24日)
概要: 二重ガバナンスの安全性を、フラッシュローン攻撃や特殊ケースに対して4層の監査で検証しました。
CertoraとOpenZeppelinが設計とコードをレビューし、StateMindがデプロイスクリプトを検証。カルテルや嫌がらせ行為を想定したストレステストも実施し、stETHの10%が反対してもシステムが正常に稼働し続けることを確認しています。
意味合い: これはLDOにとって非常に好材料です。厳格な監査により脆弱性のリスクが低減され、310億ドル以上のTVL(預かり資産総額)に対する信頼が強化されます。(出典)
結論
Lidoのコードベースアップデートは、分散化(トリガー可能な引き出し)、乗っ取り防止策(二重ガバナンス)、そして実戦で検証されたセキュリティを重視しています。これらの変更によりガバナンスは複雑になりますが、LidoはEthereum上で最も堅牢なリキッドステーキングプロトコルとしての地位を確立しています。EigenLayerやRocket Poolといった競合が増える中で、これらのアップグレードがstETHの市場支配力にどのように影響するか注目されます。